(#71/0112)
喜びも悲しみも
本当は外に出たがっている
閉じ込めず感じたままを
そっと口に出してみる
カゴの扉をわずかに開けて
飼い馴らされて怯えたままの
羽を虚空に広げてみる
傷口から滴る体液をそのままに
不安を受け入れ喜びに逆らわず
思うがままに羽ばたけば
やがて光がその身を照らす
そのままで
あるままで
確かめるのだ
光の先に待つものを
(『過去鏡』~私を捉え目覚めさせる聖地の光と陰と連なる言の葉~より)
(#70/1229)
『出番』
いつかが今になり
向風が追風になる
加速した時間が
迷いの霧を晴らし
物語の幕は上がる
(書き下ろし)
(#69/1217)
まず許し
できたら手放し
ついには越える
捨てるのではなく
越えるのです
自由という名の翼のチカラで
無理解などにめげないで
孤独さえも味方につけて
(『世界に一つのあなたへの詩』より)
(#68/1202)
男はせっせと精出して、わが子のために働きました。
ある日、その子はあっけなく、車に引かれて死にました。
男は涙が枯れた後、妻の手を取り働きました。
ある日、妻は病に倒れ、そのまま息を引き取りました。
男は心が折れたまま、老母を支えて働きました。
ある日、老母は杖だけ残し、橋から川に身を投げました。
男はそれでも気づかずに、天を仰いで叫びます。
私がなにをしたのでしょうか。
すると一羽のヒヨドリが、男の肩に舞い降りて、
小さくピヨと鳴いたのです。
男はわずかな米粒を、肩の小鳥に差し出しました。
すると男の頭に登り、続けてピヨピヨ鳴いたのです。
見上げれば彼方まで、いつもと少しも変わらない
青が続いておりました。
(『過去鏡』~私を捉え目覚めさせる聖地の光と陰と連なる言の葉~より)
(#67/1117)
走りなさいという者がいて。
休みなさいという者がいる。
愛しなさいという者がいて。
忘れなさいという者がいる。
それは罪だという者がいて。
これが是だという者がいる。
振り子は揺れて生きていて。
振り子はそれでも楽しくて。
骨身を削って右左。
命を蹴散らし右左。
他人の為だという者がいて。
自分の為だという者がいる。
振り子は止まることできず。
振り子は悩み苦しみもがき。
血を吐きながら右左。
命を投げ遣り右左。
ようやく止まったその時は。
振り子は振り子でなくなって。
ただのおもちゃの成れの果て。
見向きもされぬ木切れの兵。
(『過去鏡』~私を捉え目覚めさせる聖地の光と陰と連なる言の葉~より)
(#66/1104)
標識が見えるかな
茂みに隠れているけれど
君の道はあっちだぜ
ほかの人とは違うんだ
標識が見えるかな
少し色あせているけれど
君の道はあっちだぜ
その先で開けているんだ
君のための道なのに
誰かの足跡ばかり探して
君のための夢なのに
誰かの物語ばかり読んでいる
君の道はあっちだぜ
その先で開けているんだ
(『ふと舞い降りた無色の言の葉』より)
(#65/1022)
捨ててしまおう
誰もが欲しがるものなどは
歌ってしまおう
悲しみばかりを呼ぶものは
陽はまた昇り風が起き
散った花とて蕾を付ける
耳をすまそう
目を凝らそう
森の声
鳥の影
光の雨を感じたら
体に変化が起きるとき
命の新芽が伸びるとき
高く 高く 宙をめざして
(『神記憶』~私を受け止め明日へと導く風と雲と空の道~より)