ほぼ隔週刊詩

隔週のほぼ水曜日にお届け/作品集からご紹介しています(一部 書き下ろし)

(#87/0922)

 

奇跡を待つ身に 声 降り注ぐ

 

薄絹の先でちらつく灰色は 覚悟を試す鏡なり

行く手にそびえる岩肌の 向こうの景色に影は無し

ただ目の前の細道を 見つめて進むばかりなり

遠回りにも花は咲き いつの間にやら峠越え

 

天には仰ぐ空あれば 地には還る土があり

色なき風に色を見て 流れる雲に無常を知る

ただ目の前の細道に 命の行方を確かめる

 

薄絹の 先でちらつく灰色は 覚悟を試す鏡なり 

先に待つ色染めるのは 歩くわが身の祈りのみ

 

奇跡を待つ身に 声 降り注ぐ 

 

 (『宇宙詩』より)


(#86/0908)

 

ある時 私は水を生きていた

いのちを育み 大地を潤し

姿を変えながら 天地を往来し

時には 荒れ狂った

怒りのためではなく 

いたずらな気晴らしではなく 

ただ変化のために 

留まることのない エネルギーの軌跡として 

罪や罰ではなく 

轍を残す そのために

  

多くのいのちを奪い 

それらが生きる世界を乱し  

やがて私は鎮まった  

 

そのようにして私は 

熱となり 有機物となり 

あらゆるものに宿った   

 

私はすべてであり 

すべてが私だった 

 

(『宇宙詩』より)


(#85/0826)

 

ある時 私は光を生きていた

私は暗闇のなかで生まれ

時空を超え 走り続けた  

闇を照らし 目覚めを呼び

その軌道は 創造の旅となり 

いくつもの奇跡を起こし  

新たな光たちを生み 

唯一無二の いのちとなった 

光の記憶を宿した 

完全なるいのち  

自ら輝き すべてを照らす  

唯一無二の 光の源

 

(『宇宙詩』より)


(#84/0811)  

『ガイトウインタビュー』

 

ちょっと。コレ。まずいんだよな。顔はさ。

勘弁してよ。いや、マジで。コメントなんてできないよ。

こんなの向けられてんじゃ。そんな間抜けに見える? 

そうそう、音声だけね。で、なんだっけ? 

どうして走ってるのかって? 追われてるからでしょ。

何に? 全部だよ。全部。朝のオーブンにおはよう日本、

東京メトロにヤクルトおばさんにランチにラインに勤態

に出欠メールに学費の支払いに図書館の返却期限に

ボルダリングの予約時間に食後の胃腸薬にポイントカー

ドにいいねにリツイートにクリーニング屋のサービスデ

にデッキの録画の残り時間に夢のなかでもよおすオシッコ

にボランティアの申請に老後の年金不安にいつどうなるか

も分からない死に様までエトセトラエトセトラ。

今どき、追われてないひとなんているの? 

バッハのシャコンヌ鳴りっぱなしだよ。

からだじゅうをさ、フナムシが這いずり回ってるんだから。

いや、これホント。オタクだって追われてんでしょ?

一億総鮪社会だもんね。休日だって関係ないし。

チェックインに飯の時間、家族ぶろの予約に翌日の送迎バス、

行くとこ見るもの片っ端からググってたどってご苦労さんってね。

おぎゃあと生まれたそのあとは追われ続けて火葬場で炭素に還る

その日まで我を忘れてまっしぐらってわけでしょう。

いや、待てよ。いやいやいやいや、ちょい待った。

それなら今でも構わないな。

何が? 

いや、火葬場に行くのがね。今でもいいんじゃないかって。

どこで何をしてたって追われてるんじゃやりきれないし逃げきれないし。

やめた。 走るのやめた。つかまろう。追ってくるものにつかまろう。

あれ? 

変じゃない?

様子が違うね。いやいやいやいや。やっぱり変だ。

後ろを見ても、誰もいないじゃん。ほら。見てよ。

追っ手が見当たらないよ。せっかく覚悟したってのに。

なるほどね。なるほどなるほど。払っちゃったんだ。

何を?

全部だよ。全部。

 

(『ガイトウインタビュー』より)

(#83/0728)  

 

何処から来たのでしょうか

はるか時空をさかのぼれば

教えるまでもないことと

天上で瞬く星明かりは微笑む

 

何処へ行くのでしょうか

肉体はやがて朽ち

心は変化を繰り返す

つまりは 変わらぬ魂を知れば

おそれるまでもないことと

天上を巡る月明かりは慰める

 

地上の目を超え 鳥の目を超え

天上の目を持つならば 

あらゆるものは常ならず

広大無辺 未知の世界の扉が開く

答えは いつも 見えぬものなり

 

(『宇宙詩』より)