ほぼ隔週刊詩

隔週のほぼ水曜日にお届け/作品集からご紹介しています(一部 書き下ろし)

(#76/0324)  

   

「ありがとうリレー」

 

しっかりおよげ

歯をくいしばれ

自分に負けるな

 

ハラハラしながら

そういっている

わかいあなたに

そういっている

 

これからだよ

いまからだよ

こわいものなどあるもんか

できぬことなどあるもんか

 

ドキドキしながら

そういっている

あいしたむすめに

そういっている

 

ほんとはね

ひとことでいいんだ

ありがとうって

つたわれば

 

(『今を泳ぐ。今を生きる。』より)

 

(#75/0310)東京大空襲の日に寄せて/再掲(#11)  

   

「風が伝える彼の歌」

 

空はどうしてこんなにも

青く続いているのやら

あの日の丘で手に触れた

名も無き花の美しさ

 

この先に続く世界には

誰かを守るそのために

誰かを傷つけ攻めるような

この先に続く暮らしには

そんな悲しい繰り返し

どうかありませんように

 

風はどうしてこんなにも

やさしく頬をなでるのか

あの日の丘で手を振った

かよわき君の愛おしさ

 

この先に生きる人たちよ

誰かを守るそのために

誰かを傷つけ攻めるような

この先をつくる人たちよ

そんな愚かな繰り返し

どうか起こしませんように 

 

空はどうしてこんなにも

青く続いているのやら

 

(『いきるのうた』より)

 

(#74/0224)  

   

「みていてね」

 

何気ない 朝昼晩に

毎日の色が 見過ごされていく

 

何もない 月水金に

交わす言葉が 流されていく

 

あなたを 忘れない

その思いが 私を動かすから

 

あなたを 忘れない

その誓いが 私を照らすから

 

その日に向かって

来る日に向かって

 

私は 歩き続けている

 

だから お願い みていてね

だから お願い まっていてね

 

(『いきるのうた』より)

 

(#73/0210)  

   

散歩道にもドラマはあります

光と陰が教えてくれます

美はすぐそばにあると

目の前を過ぎるこの一瞬に

 

追いかける足を止めて

少しの時間だけ

空を見上げてみませんか

あなたに呼びかける空を

 

(書き下ろし)

 

(#72/0126)  

   

「それでもやっぱり恋をする」

 

それでも僕は恋をする

卒業式の帰り道みたいに

行き場がなくて切なくて

走っても 走っても

涙は乾きを知らなくて

大人になんか なりたくないと

遠ざけたはずの あの歌を

不意に口ずさんでみたりして

僕はやっぱり恋をする 

 

それでも私は恋をする

席替え後の登校日みたいに

手に負えなくて寂しくて

叫んでも 叫んでも

声は少しも届かなくて

大人になれば 忘れられると

遠ざけたはずの あの歌を

不意に口ずさんでみたりして

私はやっぱり恋をする

 

遠ざけたはずの あの歌を  

今も口ずさんでみたりして  

人はやっぱり恋をする  

今日もどこかで恋をする

 

(『ワクチン・ポエム』より)

 

(#71/0112)  

   

喜びも悲しみも

本当は外に出たがっている

閉じ込めず感じたままを

そっと口に出してみる

 

カゴの扉をわずかに開けて

飼い馴らされて怯えたままの

羽を虚空に広げてみる

 

傷口から滴る体液をそのままに

不安を受け入れ喜びに逆らわず

思うがままに羽ばたけば

やがて光がその身を照らす

 

そのままで

あるままで

確かめるのだ

光の先に待つものを

 

(『過去鏡』~私を捉え目覚めさせる聖地の光と陰と連なる言の葉~より)

 

(#70/1229)  

   

『出番』

 

いつかが今になり

向風が追風になる

加速した時間が

迷いの霧を晴らし

物語の幕は上がる